Aの魔法陣・間違った社員教育リプレイ
第1話
ミッション不可能・会議資料をすり替えろ!
2007年9月某日深夜。日々の生活に疲れた3人の社会人達が、電脳空間の某所に集合した。
目的は、テーブルトークRPG「Aの魔法陣」第3版を遊ぶこと。先日、簡単なチュートリアルプレイを済ませてはいるが、まだまだ手探りの状態である。
テーブルトークRPGとは、架空世界での冒険を楽しむテーブルゲームだ。「会話で進めるごっこ遊び」と称されることもある。
参加者はプレイヤーと審判役に分かれ、会話してゲーム(セッションとも呼ばれる)を進行する。
プレイヤーは架空のキャラクターに扮し、架空世界での役割を演じることで物語を紡ぐ。審判役は、架空世界での出来事をシミュレートしたり、プレイヤーが演ずるキャラクターの行動の成否を判断したり、彼らが出会う他の架空世界の住人達を演じたりすることで、物語の舞台を演出する。
想像力を駆使し、自由な発想で多種多様な物語が即興的に紡がれていくところが、テーブルトークRPGの大きな魅力だ。
架空世界での様々な事柄、例えばキャラクターの行動の成否などは、あらかじめ決められたルールに則り、判定される。判定に用いられるルールには簡単なものから複雑なものまで、様々なものがある。今回使用するルールは「Aの魔法陣」第3版である。
一般的なTRPGでは、審判役のことをゲームマスターと呼ぶが、Aの魔法陣ではSD(セッションデザイナー)と呼ぶ。
SDは、今晩のセッションをどのように進めるか、頭をひねっていた。…風呂につかりながら。
SD:ふー。風呂あがりましたー。…プレイヤーBさんは、まだですかね。
プレイヤーA:酔いどれですかね? 良いプレイが出来そうです(笑)
プレイヤーB:こんばんわ。
プレイヤーA:どうも!
プレイヤーB:残念ながら、今は酔いどれじゃないので、良いプレイはできないかも(汗)
プレイヤーA:今から酔いどれになることは出来ますよ(笑)
SD:では始めますか。
舞台として選んだのは、現代日本の架空の企業。架空世界ではあるが、魔法も恒星間飛行技術もない、私たちの暮らす世界とほとんど同じ世界である。
追加ルール(サプリメントと呼ぶ)を使用する必要がなく、また、プレイヤー自身の経験から世界観を共有しやすい。これは、普段、仕事に忙しく、ルールを読み込む暇がない参加者の事情を鑑みての選択だ。
「Aの魔法陣」第3版のルールブックをお持ちの方におかれては、基本的には日常編ルールをベースにしてプレイするとご理解いただきたい。
ファンタジー世界でもSF世界でもないが、私たちの日常だって波乱に満ち溢れているし、世の中には数多の日常を舞台にした名作が存在する。
…ざっくばらんに言えば、会社員のドタバタコメディをやろう! ということである。
本日の参加プレイヤーは2人。キャラクターは事前に作成してもらっていた。
プレイヤーAさんの作ったキャラクターは、須田芽衣子。
ちょっとコアな趣味と妄想癖を持つ、経験豊かな資材部勤務の先輩社員だ。
ロングストレートの黒髪を持つ。略して黒髪ストロングと呼ぶ…これ重要。
気分屋で神経質なところもあるが、ストレスはお酒で晴らす…というあたり、実にリアルだ。
Aの魔法陣(第3版)・間違った社員教育 キャラクターシート | ||
---|---|---|
名 前 | 須田 芽衣子(すだ めいこ) | |
年 齢 | 28 | ![]() |
性 別 | 女 | |
血 液 型 | B型 | |
星 座 | 獅子座 | |
容 姿 | 背が高い。髪はロングストレート。メガネ。 細面。胸が小さい。低い声。 |
|
原 型 | 神経質で勘が鋭い | |
自然体というかだらしないが発想力がある | ||
気分屋で感情移入しやすい、話題が豊富である | ||
大変プライドが高く、それなりに優秀である | ||
頭脳派・パズルを解くのが得意 | ||
設 定 |
資材部勤務。仕事の能力自体は並だが、サボるために磨いた経験とコネと勘がある。 策略好きだが、ほとんどが使い物にならない。趣味は酒と同人活動。腐女子。 普段はぼんやりしているように見えて、脳内では電波系な妄想を繰り広げている。 会話は嫌いではないが話が飛びやすい。口調はフランク。時折アニメや漫画の台詞が混じる。 気分屋。時折、異常な集中力を見せるが、細かいことでキレることも。 面倒な性格と自覚しているが、自分が正しいことは疑わない。 行きつけのイタリアン料理店があるらしい。 「すだめって言うな! 確かに片付けられないけどさ」 |
プレイヤーBさんの作ったキャラクターは、風祭凛々子。
芽衣子と同じく資材部勤務だが、穏和な優等生のフリをして、何事にも強いこだわりを持つ熱血社員だ。
ウェーブをかけたふわふわのロングヘアと、するどい三白眼がトレードマーク。
Aの魔法陣(第3版)・間違った社員教育 キャラクターシート | ||
---|---|---|
名 前 | 風祭 凛々子(かざまつり りりこ) | |
年 齢 | 26 | ![]() |
性 別 | 女 | |
血 液 型 | AB型 | |
星 座 | おうし座 | |
容 姿 | 長身。ふわふわロングヘア。三白眼。 |
|
原 型 | 感情的だが洞察力が高い | |
頭脳明晰で二面性がある | ||
まわりから愛される | ||
審美眼に優れ、しっかりした美意識がある | ||
肉体派・運動神経がいい | ||
設 定 |
資材部勤務。穏和な優等生を演じる熱血漢。 周囲の期待を察して行動できるタイプ。 独自に確立した美意識を持つ。 美意識に反した他人の行動を見ると、普段は何も言わないが、たまに怒りが爆発する。 滑るように歩くが、走ると速い。 ここぞという場面では、決めのポージングをする。 寂れたバッティングセンターの常連。駅でもバットで素振りするほどで、近隣住民に恐れられている。 こだわりのある店を探して、店長と熱く談義するのを趣味としている。 |
この、癖のあるお二人を迎え、いよいよゲームスタートだ!
SD:シチュエーションは平日午後、昼休み明けってことでOKかな?
まずは、食堂から職場に戻るところでもロールプレイしてくださいませ。
プレイヤーA:(→以後・凛々子)「芽衣子さん、この食堂のパスタ許せないと思いません?」
プレイヤーB:(→以後・芽衣子)「なんで?」
凛々子:「パスタというのはもっとこう…ごりっとしているべきだと思うのです。
ゆで時間過多ですよ」
芽衣子:(パスタにもきっと、茹でられていたい事情があったのでしょ?)
(私も長湯は好きだし……)
(でも、食べる方からすればたまったもんじゃないか……)
「そうねぇ」
と、中空を見つめつつ、何か考えている(笑)
SD:(笑)
凛々子:「(芽衣子さんが考え事を……きっと哲学的なことを考えてらっしゃるのね)」
SD:そんないつもの昼下がり。
「あーーーーーーーーーーーーー!!!」
資材課の清水の悲鳴が、フロア中に響き渡った。……悲しいかな、よくあることなのだが。
「しまったー! 課長に渡す書類、間違えた!!!」
SD:…というところで…
凛々子:それ、我々のいるところと同じフロアなんですね?
SD:はい。
芽衣子:清水さんって、どんな人? 男性? 女性?
SD:女性です。
芽衣子:後輩?
SD:ドジっ娘ということ以外は決めてないので、好きに絡めていただいて結構です。
凛々子:ドジっ娘なら、後輩でないと殺意が沸きそうですよね(笑)
SD:そうね(笑)
ではM*より始まる、本セッションの目的をば、記述いたします。
M*清水が間違えて課長に渡した書類を奪還する 難易度7
SD:制限時間は、ゲーム世界中で30分です。それまでに書類を奪還してください。
1ターンゲームとします。よろしいでしょうか。
凛々子:なるほど。
Aの魔法陣では、「何を達成したら成功となるか」というセッションの目的が提示される。あわせて、「難易度」という数値が提示される。
プレイヤーキャラクターは「成功要素」という、物事を成功に導くためのいろいろな要因(能力や性格や持ち物、コネクションなど)を持っており、プレイを通じてこの成功要素を提出して、難易度の数値を減らしていく。最終的に、難易度の数値がゼロになれば目的達成である。
セッション終了までに難易度の数値がゼロにならなければ、目的達成の成否はサイコロの出目に委ねられる。
つまり、Aの魔法陣では「目的」という名のボスが「難易度」という名のヒットポイントを持っており、これをプレイヤーキャラクターが「成功要素」で削っていくゲームである、と考えてよい。
芽衣子:う、ルールをすっかり忘れている。
SD:最初は、プレイヤーとSDの間で、質疑応答を通じて状況や設定を確定します。
芽衣子:まず作戦を決めるんだよな…。
どうやって難易度を分割するんだったか…。
SD:そうですね。えーと…
Aの魔法陣・第3版は、次のような流れでゲームが進行する。
各ターン、プレイヤー毎に手番が回ってくる。
その手番の中で、プレイヤーはSDと質疑応答を交わし、状況や設定を確認する。
次いでプレイヤーは、キャラクターが、目的達成のためにどんな行動をするか作戦を立て、行動宣言する。
SDは、この宣言された行動を達成すると、この行動を達成するための難易度(成功するために必要な成功要素数)はいくつか、また、M*で提示された全体の難易度からいくつ数値が減るか、を提示する。(この2つの数値は原則として等しいのだが、作戦がうまいとき等は、ボーナスとして差が付くことがある。これを前提変換という。)
これを受けて、プレイヤーは、行動を達成するために用いる成功要素を提出する。
SDは提出された成功要素の抽出作業を行い、行動の成功・失敗を判定する。
最後に、行動の成否に応じて、M*で提示された難易度を削る。
これを、プレイヤー人数分、ターン数分、繰り返すのである。
SD:質疑応答で作戦毎の難易度も質問できます。
今日は1ターンゲームなので、各プレイヤーが1回ずつ行動できます。
凛々子:はい。
SD:今回の場合は、それぞれの行動達成の結果、合計で難易度7を削ればみなさんの勝利ということになります。
芽衣子:つまり、例えば、成功要素を3つと4つ使うような行動を、各自が作戦として宣言して行動出来ればよし?
SD:そうですね。ただ、行動が成功するかどうかは、やってみないとわかりませんが。
芽衣子:あいあい。足りないぶんは運よね。
SD:成功要素の抽出率は100%とは限りませんので、気を付けてくださいね。
作戦遂行のためにプレイヤーから提出される成功要素は、すべてが本当に作戦達成の役に立つものとは限らない。実際に役に立つかどうか、SDが公正に判断して抽出・棄却する。
芽衣子:了解しました。
凛々子:成功要素登録の候補案が沢山あるんですが、今の段階では選ばなくて良いんですかね。
SD:しまった、忘れてた。成功要素を今日は10個、登録してください。
一同:(笑)
凛々子:では、
【ふわふわロング黒髪】【三白眼】【優等生の話し方】
【冷静を装う】【こだわりの熱いトーク】【背が高い】
【走るのが速い】【ポージング】【バッティング】【差し棒】
でお願いします。
SD:OKです。
芽衣子:んー、どうしようかな。
【吊り目】【意外に良い笑顔】【OL擬態】
【怒ると黙る】【『なんだってー』と小声で呟く癖】【痩せ型】
【漫画知識】【酒飲み】【白紙のメモ用紙】
【比較的高いPCリテラシ】で。
SD:了解しました。
ここで登録された成功要素1つ1つが、行動を成功させるための道具であり、技能である。
ふたりはこれから、これら成功要素を役立てて、書類を奪還するための作戦を遂行するのだ。
Aの魔法陣・第3版では、成功要素には「ゲーム中のどんな場合でも役に立つ万能なもの」を登録してはいけないルールがある(万能成功要素禁止)。そのため、ふたりとも、ちょっとずつ制限があるような成功要素を登録申請しているのだ。
凛々子:では、まず。
課長のデスクは同じフロアにありますか?
SD:んー。デスクは同じフロアにあるけどね。
残念ながら課長は、数分ほど前に書類を持って会議室へ旅立っていきました。
芽衣子:あらら。
SD:書類には、部の宴会のおそるべき計画が記載されております。
課長が見たらどんなことになるか想像したくないみなさん。
凛々子:はう(笑)
SD(清水):「はわわー。凛々子先輩ー! どうしようーっ」
凛々子:すいません、ちょっとグーでグリグリしたい(笑)
芽衣子:(笑)
SD(清水):「いたいいたいいたいいたいですぅ」
芽衣子:おもむろに鼻もつまみますか。
凛々子:「今度やったら、芽衣子スペシャルを食らわせてもらうわよ!」
SD(清水):「ふぐぐぐふぐぐぐー」
凛々子:では口も(笑)
芽衣子:鬼ですか(笑)
みんなひどい。
凛々子:それはともかく(笑)
会議室は遠いですか?
SD:んと…そんなに遠くないです。
凛々子:会議はまだ始まってないんですね?
会議が始まるまで30分ということですか?
SD:スケジュール的にはぎりぎり…かなあ。
「課長が書類を見てしまう」までが30分、と考えています。
凛々子:なるほど。逆に言えば、会議が始まっていても、課長が書類を見ない限り大丈夫ということですか。
SD:そうですね。
凛々子:では、目的を分割するとすれば…
「課長を会議室から誘い出」して「書類を奪還」ですかねぇ、芽衣子さん。
芽衣子:書類は清水さんが印刷したのかな?
「書類はあんたが印刷したの?」
SD(清水):「はいー、今度の宴会の企画書ですー! 自信作ですよー(えっへん)」
凛々子:殺意が(笑)
芽衣子:少し怒ったので、ちょっと無言になります(笑)
SD(清水):「はわわー! でもあの書類をみたら、部の全員が減棒されちゃうかもー」
凛々子:「あなただけ減棒ならともかく。私たちまで減棒になるのよ!
冗談じゃないわ。…で、…自信作の書類は何ページ?」
SD:決めてないなあ。
Aの魔法陣では、SDが決めていない設定については、「決めていない」と申告する。こうした場合、この場の全員の相談で、ゲームが面白くなるように設定をしてよいことになっている。
凛々子:1ページか否かが重要ですかね。正確に言うと1枚かどうかですけど(笑)
芽衣子:「銀河の歴史がまた1ページ……(ぼそっ)」
SD:好きに決めていただいていいですよ。どうする?
芽衣子:1枚で済む気はしないなぁ…
凛々子:自信作ですからねぇ(笑)
同人誌のコピー本くらいですかね?(笑)
SD:そんなにあるかな?
芽衣子:4枚…2ページを1枚にまとめて両面印刷したとして…
内容は15〜6ページぐらい?
凛々子:そうですね。
SD:じゃ紙は4枚で左肩ホチキス止めでってとこですか?
凛々子:はい。OKです。
芽衣子:そんな感じで。
SD:じゃ、それで決めましょう。
これで状況設定は固まった。いよいよ、キャラクターたちの行動である。
作戦会議が始まった。
果たしてどうやって、書類を奪還するのか…
SD:まずはどうしますかね。
芽衣子:「ミスプリでした、って取り替えるのが一番簡単だとは、思うの。
ただ、そうか、って言って課長が手元の書類を見たら終わり」
凛々子:「終わり……ですね」(清水さんを見る)
SD(清水):「はわわー。ごめんなさいー」
凛々子:「ここは、清水さんに活躍してもらうというのはどうでしょう?」
芽衣子:「課長、今度の会議って、プレゼン側なんだっけ?」
SD:問題の入れ替わってしまった資料は、本来プレゼンのときに発表者側が使うものですね(笑)
そうでなければ、配布資料として量産されていて大変なことに…
芽衣子:…(笑)
凛々子:ゲゲー(笑)
芽衣子:「とすると、きっとプロジェクターやノートPCも持っていて、…
全部をいっぺんに一人では持てないよね…」
考え込む一同。
芽衣子:「あのね。…今から会議室変更したらどうかな」
凛々子:「今決まってる会議室を使用不能にするんですね?」
芽衣子:「うん」
凛々子:「まだ他の人が来ていなければ良いのですけれど」
芽衣子:「むしろ来ていた方がいいわ。ごたごたになるから。…
そうだ、別の会議室だった、ってことにしようか?
伝わってなかった責任は清水さんに取ってもらうことにして」(にやり)
凛々子:「それは名案です!」
SD(清水):「はうー…しかたないですー」
芽衣子:「(どんなお仕置きが待っているのかな…ふふふ…)」(またぼーっと妄想…)
凛々子:「怒られるのが清水さんだけ、というのがすばらしいですね」
言いたい放題のお二人。
君たち…(笑)
芽衣子:「問題は、次の会議室の予約を、昨日以前の日付で取ることと、移動するときに書類をすり替えることね。…
凛々子は、すり替えをどうにかできる?」
凛々子:「すり替えは出来ると思いますよ。
ただ、課長の気をそらす話題が必要ですね」
芽衣子:「多分『会議室、間違ってましたー!』って駆けつけたら、会議の参加者に謝ったり、持ち物まとめたりで、忙しいと思うんだ」
凛々子:「課長、書類お持ちします、でなんとかしますね」
芽衣子:「がんばってね。
会議室の予約の方は何とかできるんじゃないかと思うの」
凜々子から別の案が提案される。
凛々子:「でも、課長だけ引っ張り出す方が簡単ではありません?」
芽衣子:「どうやって?」
凛々子:「課長を激怒させる技は清水さんが沢山ご存じですよ♪」
芽衣子:「それもそうかぁ…」
と清水さんをジト目。
「その後どうするの?」
凛々子:「課長がプレゼン室を出てくるレベルのミスをして下されば良いと思います」
芽衣子:「こっそり会議室に入って、すり替えるのね」
凛々子:「そうですね」
SD(清水):「はうー。それはでも、激怒させたあと収拾がつかなそうですー」
凛々子:激怒させた後、書類の内容以上の大問題になるということですか(笑)
まあこれは、あくまで清水さんの問題だから、その作戦もアリだと思うんだがね。
芽衣子:「ここから、会議室の状況、分かるかな。もう参加者は来てるのかなぁ」
と、SDへ質問です。
SD:部屋の近くに行かないと、わかんないかな。
芽衣子:「他の人たちがもう来ていたら、その目の前で書類すり替えってわけには行かないんじゃない?」
凛々子:「そうですね……では芽衣子さんの策で参りましょうか」
大まかには、「会議室変更」して「移動中に書類すり替え」ですか。
芽衣子:そんな感じですね。
凛々子:会議室変更がちょっとややこしいですけど。
芽衣子:ええっと、そうだ、質問。
SD:はい。
芽衣子:会議室の予約は、ある程度電子化されていると考えて良い?
SD:決めてなかったので、そちらで決めてよいですよ。
芽衣子:じゃあね……どこかのデータベースで管理されていて、管理担当は総務部ってことでどう?
SD:いいですよ。
芽衣子:OK。この作戦だと、行動手番的には、こっちが先かな?
凛々子:そうですね。私が書類のすり替えを担当しますので、会議室変更のほうをお願いします。
SD:では、難易度ついての質疑応答、いきましょうか。
芽衣子:いちおう、後の手番の行動でどのくらい難易度を削れるのか、聞いておきたいかなあ。
凛々子:では…
課長が会議室移動するとき、課長の荷物のうち、書類を含む荷物を任される難易度はいくつでしょうか。
SD:書類を含む荷物を任されるように誘導する、難易度、ってことかな?
その状況になってみないとわからないけど、難易度4くらいかなあ。
凛々子:お、けっこう高いですね。
SD:ただ、そのときの混乱ぶりが予想できないので、まだ予想値です。
芽衣子:うーん。できるだけ会議開始直前が良くて、かつ課長が書類を確かめない程度に余裕が無い状態がいいのかな(笑)
凛々子:体当たりしますかね。「どーん!」と(笑)
SD:まぁ、会議室変更策のほうをやってみないことには、状況が確定していないので、なんともわからんよねえ。
凛々子:そうですよね。
芽衣子:じゃあ、こちらの手番の行動について質問。
SD:はい。
芽衣子:飲み仲間の総務部の男の子に、今から電話して、飲み会で握ったネタで軽く脅して、会議室の予定を変更してもらい、その予約受付を2日前にしてもらう難易度は?
…その子は施設管理(予約含む)の担当ってことにして。
凛々子:怖! 芽衣子さん怖!
芽衣子:(笑)
SD:「予約変更をお願いする」かつ「予約受付を2日前にしてもらう」難易度が…(計算中)
芽衣子:実際は、ちょこっとデータベースの値をいじってもらうだけよん。念のため。
凛々子:直接いじりに行くのかと思いましたヨ(笑)
芽衣子:いやいや(笑)
SD:普通だと難易度4なんですが、すだめさんに「脅すネタがある」ことが効いて、前提変換がかかって難易度3に下がります。
この行動を達成するためは成功要素は3個必要なんだけど、もし成功すればミッションの全体難易度からは4削れます。
凛々子:いいですね。
芽衣子:すだめって言うな!(笑)
凛々子:(笑)
芽衣子:了解しました。
でさ、この先、私が実際に行動宣言して、成功判定だよね? 凛々子が行動する前に。
SD:そうですね。
芽衣子:…じゃあ、ここで私が失敗すると、じえんど?(笑)
凛々子:私がその分沢山削れば…
SD:最悪サイコロで判定という手もありますし…。
芽衣子:うーん、他に質問も思いつかないし。いきなり行ってみます。
凛々子:期待してます!
いよいよ芽衣子の行動宣言が始まる。
SD:最終的な行動宣言をお願いします。そのあと成功要素提出、で。
芽衣子:じゃあ、手の届く机の電話を取り上げて、さっきの質問そのままの行動をします。
SD:了解。
芽衣子:成功要素は、…あ、その前にロールプレイかな?
SD:あわせてやってもらっていいですよ。
芽衣子:「施設の石井君をお願いします。
…あ、こんにちは、あのねー(中略)
そうそう、今度合コンとかいう話聞いたよー、で、君の狙ってる○○さんねー…」
SD(石井):「な、なんですか須田さんっ…
え…そんなこと言われましても…」
そんなネタでゆするのかー!
芽衣子:「(中略)、で、やってくれると嬉しいなぁ。
無理なら無理でいいけどー、○○さんに良くない情報が行くかもー…」
SD(石井):「(うわーん)」
凛々子:大酒飲みは飲み会でも最後まで記憶ありますからね(笑)
芽衣子:(笑)「でもやってくれると嬉しいなぁ」
SD:じゃあ成功要素をどうぞ。
芽衣子:はい。
【OL擬態】【意外に良い笑顔】【比較的高いPCリテラシ】【酒飲み】【白紙のメモ用紙】で。
【白紙のメモ用紙】は、判定には直接関係ないけど、「予約が変わったよ」報告を清水さんの机にあらかじめ貼っておいたことにしよう。
以上です。
あ、ロールプレイ追加。
SD:どうぞ。
芽衣子:「技術的には、できるんじゃないかなって思うのよ?」
…ベタだな(笑)
SD:ベタですね(笑)
凛々子:(笑)
芽衣子:はい、以上です。
芽衣子の行動宣言と提出された成功要素から、芽衣子が行動に成功したかどうかをSDが判定する。
行動の達成に役立った成功要素を抽出し、その数が難易度の値以上になれば成功だ。
SD:悩むところだなあー。
芽衣子:(汗)
SD:【OL擬態】【比較的高いPCリテラシ】【酒飲み】が抽出されました。
【意外に良い笑顔】は直接顔が見えるわけじゃないので、【白紙のメモ用紙】はやはり直接関係しないので、抽出されませんでした。
成功です。M*の難易度は残り3になりました。
芽衣子:わーい♪
凛々子:おお(笑)
SD:ということで、予約した会議室が間違っていた、という状況になりました(笑)
凛々子:あとは課長とぶつかって書類をすり替えればOKですね。
ふふふ。そう簡単にいくかな? 次は凛々子の番だ。
さあ、芽衣子の策略により、お膳立ては完了した。
はたして凛々子は、課長の手から書類を奪還できるか?
凛々子:では行きますね。
SD:質問どうぞ。
凛々子:課長の荷物を任される難易度は、先ほどの質問では難易度4でしたっけ。
SD:ただ、まだ会議室の予約が変わっただけよ?
そこは注意ね。
凛々子:あ、なるほど。
えーと。…課長をまず会議室から出さないといけませんか?
SD:出すというか、誰か知らせに行く必要あるよね。
凛々子:それは清水さんがやってくれると思って良いんですかね。
芽衣子:会議室が変わったとなると、みんなで大移動になると思うのです。
むしろ、知らせに行った方が、そのまま手伝えるんじゃない?
凛々子:こちらから出向きますか。
SD:了解。じゃあ会議室前に来ました。
凛々子:課長は今座ってますか? あと、荷物の状態とか。
SD:特に決めてないんですが、どうしますかね。任せます。
凛々子:発表していると終わりですから…発表はまだしてないですよね?(笑)
SD:そうね。
凛々子:では荷物を机の上に置いて座っていると言うことで…
SD:了解。
凛々子:では質問です。
会議室のメンバーに会場変更を告げて、その後課長に差し棒を渡して、「頑張って下さいね」とか言いながら…
芽衣子:(笑)
凛々子:「あ、お荷物お持ちします」と言って、書類が含まれる荷物を手に入れる、難易度はいくつでしょうか。
芽衣子:あ、「すり替える」、を入れないといけないんじゃない?
凛々子:そうですね。さらに荷物を持っている状態で書類をすり替える、難易度ですね(笑)
まぁ荷物を持っていればほぼ何とかなりそうな…
SD:(計算中)ああ、この場合、複数行動の統合ルールが適用されるのかぁ……。
ちょっと凛々子の質問した行動の中身が具体的で、細かすぎた。このような場合、難易度が高めになってしまう。
SD:難易度14…(爆)
凛々子:いやいや(笑)
SD:第3版ルールブックによると、今回のケースで3つ以上の行動をまとめて行うと、難易度が+10されるのです…
凛々子:あ、そういうことですか。
SD:ちょっとだけでいいんで簡単にしてみてください。
芽衣子:私の行動は統合って奴にはならないの?
SD:芽衣子さんの場合は、ふたつのお願いを聞いてもらってる、つまり行動としては2つ、と判断しました。
凛々子が、行動の内容を整理する。
凛々子:「荷物をまとめる振りをしながら書類をすり替える」でどうでしょうか。
SD:難易度4かなあ。
凛々子:うーむ。もう1つ、難易度を落としたいですね。
芽衣子:ですねぇ。
凛々子:「お荷物お持ちします」などの芝居によって課長の気を反らせる、ということで、前提変換にはなりませんかね。
SD:では、どんな感じでロールプレイするか提出してもらえれば、考慮します。
凛々子:はーい。
SD:行動宣言と、成功要素提出をお願いします。
凛々子:行動は、「走って到着した会議室で会場変更を告げ、課長の荷物運びをしつつ書類をすり替えます」。
SD:はい。宣言了解ですー。前提変換をかけるためのロールプレイをお願いします。
凛々子:ぜぇはぁしながら会議室に着きます。
「皆様、申し訳ございません。会場変更がございまして」
「私がご案内いたしますので準備をよろしくお願いいたします」
ここでポージング(笑)
芽衣子:ポージング(笑)
SD:なるほど。
凛々子:で、課長に近づいて、
「課長、ご苦労様です。荷物をお持ちいたします」
と言って、荷物を持って会議室移動します。
列の先頭にいるので課長からは見えません。
必死の形相で書類を探し、すり替えます(笑)
芽衣子:(笑)
SD:ふむふむ。
凛々子:「皆さま! こちらでございます」
で会議室移動完了です。
最後も、もちろんポージング(笑)
SD:了解。じゃあ成功要素を出してください。
凛々子:はい。
【優等生の話し方】なので悪事がばれにくくなっております。
【冷静を装う】よう行動しますので、以下同文。
さらに【背が高い】ので、書類すり替え中も体で悪事をカバーできます。
芽衣子:上手いなぁ(笑)
凛々子:【走るのが速い】ので、課長の発表前に会議室に着きます。
【ポージング】で会議室メンバーの気を引きます(笑)
以上です。
SD:なるほど。
凛々子:しんどかったです(笑)
芽衣子:なんかすごいぞ(笑)
凛々子:ポージングが、肝心の課長に効いてない気がします(笑)
芽衣子:はう…
凛々子:あ、実は【ふわふわロング黒髪】も悪事の隠蔽に役立ったのでは…物理的に(笑)
芽衣子:隠蔽体質ですね。
凛々子:誰がうまいことを(笑)
芽衣子:(笑)
SD:さっきので、全部でよい?
凛々子:ではダメ元で、【ふわふわロング黒髪】もお願いします。
以上です。
SD:了解ー。抽出します。
凛々子:はーい。
SD:【優等生の話し方】【冷静であろうと努力】【走るのが速い】【ふわふわロング黒髪】が抽出されました。
難易度は4でしたので、特に前提変換をかけなくても、成功です。
凛々子:わーい!
【ふわふわロング黒髪】が抽出されるとは。
芽衣子:おおお。ふわふわパワー恐るべし。
凛々子:体質、以外と重要ですね(笑)
芽衣子:確かに。物理的なことは説得力あるからなぁ。
SD:【背が高い】は後ろからみたときの胸付近での作業の隠ぺいにはあまり役に立たなそうなので、と、【ポージング】は指摘のとおり課長がターゲットになってないので、抽出されませんでした。
凛々子:なるほど納得です。最後に、追加がないか聞いてくださって有り難うございます(笑)
芽衣子:しかしポージングは止められない凛々子であった。
凛々子:止めませんよ?(笑)
無事、M*で提示された難易度を削り切った。M*ではじまる目的を達成した!
SD:というわけで、無事、問題の書類——「黒い酒宴」計画書は奪還されました。
芽衣子:わーい!
凛々子:清水さんはLife Extendですね(笑)
SD(清水):「はわわーありがとうございますー。一時はどうなることかとー」
芽衣子:「良かった良かった。これで私達の首は繋がった」
凛々子:「それにしても……この酒宴の手引きはよくできてるわね」
SD(清水):「そりゃあもう、全身全霊を込めましたからー!」(ふんっ、とちょっと得意げに)
凛々子:「次回も作ってもらいましょうか♪」
芽衣子:「それがいいねー」
SD:…といったところで完了です。
凛々子:はーい。
芽衣子:わは(笑)お疲れ様ー。
凛々子:お疲れ様でした〜。「黒い酒宴」のシナリオもいつか是非やりたいです!
SD:お付き合いくださりありがとうございました。
無事、書類を奪還した二人。
書類に書かれた「黒い酒宴」についても、いずれ語られることになる。
だがその前に、この後、キャラクターの成長処理で、とんでもないことが起きるのだ…次回に続く。